さしより備忘録

簡単な世界じゃないからワクワクするね

「少年たち君にこの歌を」あらすじと感想

少年たち2021のあらすじまとめ。ネタバレ含むのでご注意ください。
主観で書いているので、解釈違いがあったらごめんね。

 

チーム構成と罪状

赤チーム

タイショウ:暴行。元半グレリーダー。
リュウ:暴行。弟を馬鹿にした人を殴った。弟が5歳の頃にリュウガが椅子引きをしたせいで、弟は右足が動かなくなり、いじめられるようになった。そのいじめた人をボコボコにして捕まった。
ウキショ:オレオレ詐欺。中卒で給料が良い会社に入ったら詐欺の会社だった。おばあちゃんのためにお金を稼がねばならず、受け子をしていたところを逮捕。
フジイ:暴行。7人くらい病院送りにした。
ナス:放火。孤児院育ちでハシモトとは兄弟のように育った。施設を守るため、地上げ屋に火をつけようとするハシモトを手伝い一緒に捕まった。
カナサシ:暴行。親を知らぬまま育ち、孤児院で親の悪口を言われて相手を殴った。

青チーム

ユウト:傷害。タイショウを助けるため、喧嘩に加わり、相手を刺した。
ミズキ:窃盗・暴行。先天性心疾患の弟の治療費のため、サラ金に押し入って金を奪った。
ハシモト:放火。6歳の頃孤児院に入り、ナスと出会う。施設を守るため、地上げ屋にナスと一緒に火をつけた。
サクマ:窃盗。成績優秀で将来は医者か弁護士と親の期待のもと育つが、高校受験に失敗してグレーな仲間と連むように。ピッキングが得意で盗みをして逮捕。
ガリ:傷害。将来ラッパーになりたいという夢を父親に否定され、さらにお前の育て方が悪かったと母親に暴力を振るう父親を刺した。


要点まとめ


・赤→美 少年、青→HiHi Jets、看守→少年忍者4名
・1時間45分の上映で内容がコンパクトに
・脱獄成功パターン、死亡1名のみ
・罪の内容が令和仕様
・看守役復活。看守メインは川﨑星輝
・ショータイムはHiBオリ曲1曲ずつ
・太鼓パフォーマンス「クラッシュビート」追加


少年たち2021物語あらすじ

オープニング

ここはとある少年刑務所。犯罪に手を染めた少年たちが叫ぶ。親を刺した者、放火をした者、詐欺をした者、人を殴った者……さまざまな事情を抱えた少年たちは、狭い塀の中でもがきながら少年たちは人を求め、やりきれない思いを抱えて過ごしていた。

♪Over Again

刑務所の少年たち

少年刑務所の中では、赤と青2つのチームに分かれて生活している。2組は互いをライバル視し、看守の目を盗んではちょっかいを出し合っていた。

♪俺たちは上等

この少年刑務所は、厳しい看守がいて、"真人間"になるための更生が行われている。冷酷な看守たちは銃を持ち、逆らうと容赦なく懲罰房に入れられるような環境の中で生きる少年たち。彼らは厳しい生活ながらも、ルールには縛られないと日々を送っていた。


それぞれの事情

新入りのカナサシは、赤チームに入ることになった。彼は少年刑務所に来てから日記をつけているようだ。何気ない毎日の出来事を綴っている。

まだ刑務所内でのルールを全く知らないカナサシは、赤チームがお気に入りのブランコに座ろうとしてしまう。そこへ赤チームのメンバーがやってきて、カナサシはナスに怒られてしまった。声が小さなカナサシへ、タイショウはなぜ少年刑務所に来たのかを尋ねた。


♪僕に聞くのかい?


カナサシは孤児院で育った、親の顔も知らない子だ。ある日、親の悪口を言われ相手を殴ったことでここにやってきたと、大きな声を出せないカナサシはフジイに耳打ちする。

そこから赤チームの少年たちはそれぞれ自分がなぜ少年刑務所にやって来たのかを語り出す。フジイは7人を病院送りにした。筋が通らないことが気に入らない性格のようだ。ナスは放火、ウキショはオレオレ詐欺リュウガは弟の悪口を言った人を殴った、みんなそれぞれの事情がある様子だが、お互いを仲間と認めていた。



告白

青チームの少年たちは、鬱憤を抱えている。エリート人生が待っていたはずなのに、受験の失敗で全てが台無しになったサクマ、ラッパーになりたいと夢を言ったら、お前の育て方が悪いと母親を殴り出した父親を気がついたら刺していたイガリ、弟の入院費のためにサラ金に押し入ったミズキ。みんな人生が狂ってしまった。少年たちはここに来る時、夢や希望も捨ててしまったようだ。

「世の中にはのうのうと暮らしている奴がいる、あいつらと俺の違いはなんだ?人生は生まれた時から決まってるんじゃないのか?お前は天国、俺は地獄行きだってな」と、幼少の頃に親に捨てられて恵まれない環境で育ったハシモトは、この社会が悪いと苛立っている。

その言葉を聞いたミズキは「だとしたら、生きてる意味なんてないじゃないか」と叫ぶ。お前には弟がいるだろうとユウトが宥めるも、「あいつはもうすぐ死ぬんだよ、何のために生まれてきたんだよ」と、会えない弟を思いミズキは苦しげな声を上げる。

「お前に愛されるためだろ!人生が短いのは悲劇じゃない、大切なのは生まれてきて、誰に出会ったかなんだよ」とユウトは大声でミズキに伝えた。

♪嗚呼青春期


心の中を嵐が吹き荒れている、過ぎた時間はもう戻せない。少年たちが抱えているこの気持ちを誰かが分かってたまるか。彼らは風の中で荒れ狂う思いを胸に叫び歌った。


すれ違う友情

タイショウとユウトは、もともと同じ半グレチームだった。タイショウが自分で片付けようとしたケンカに、ユウトが助けに来た。しかも、ユウトは相手を刺して少年刑務所に入ることになってしまった。2人にはそんな過去があってここにやってきたのだ。

タイショウはいきなりユウトを殴る。とにかく今は優等生ぶっているユウトが気に食わない。ケンカにユウトが助けに来たことも、相手を刺したけれどお前のせいじゃないと言われることも、一人で行くなと忠告されたことも。

「あのまま行ってたら、お前殺されてたよ」とユウトは振り返り、「自分の力を過信しすぎるのはお前の悪いところだ」と指摘した。仲間を巻き込みたくなかったから、無茶なことをしたんだろうと問うも、タイショウは「知るか!死のうが生きようがお前には関係ない」と聞く耳持たずだ。

タイショウは自分のせいで、ユウトが少年刑務所に入ったと思っている。自分を責めて欲しい、いっそお前のせいで人生がめちゃくちゃだと言ってほしい。しかし、ユウトは自分の意思で相手を刺したといい、自分も同罪だとどこか冷静だ。

自分たちの罪は自分たちで償うしかないと言うユウトと、過去に囚われたままのタイショウ。気持ちがすれ違ったままの2人だが、ついにユウトも声を荒らげ、タイショウに殴りかかった。


♪Rival -Battle-
 

たとえユウトがどれだけタイショウを責めても、彼らの罪が消えることはない。ポツリと「俺も同罪なんだよ」とユウトが言う。タイショウはまだそれを受け入れられずにいた。



約束の歌

ミズキはベンチで弟から届いた手紙をこっそりと読もうとしていた。そこへリュウガがやってくる。

リュウガは心優しい少年だ。そして大好きな弟がいる。なぜ少年刑務所に来ることになったのか、リュウガは自分の罪を語り出した。

それは弟がまだ5歳の頃。リュウガがいたずらで椅子を引いたら、弟は怪我をしてしまい、右足が動かなくなってしまった。何度手術を繰り返しても、まだ足は動かず、弟はいじめられるようになる。ある日、弟の歩く様子を見た友人にからかわれたリュウガは、弟が止めるのも聞かずに相手を殴った。後悔しているリュウガに、「俺も同じことしてたよ」とミズキは慰めた。


ミズキには、先天性心疾患を患っている弟がいる。入退院を繰り返し、母親は治療費を工面するために日々奔走していた。それを見たミズキは、弟の治療費のためサラ金に押し入り金を奪ったのだ。


弟からの手紙は、病状が悪化してまた入院するという連絡だった。「いつものことだから、また1週間くらいで出てくるだろう」と明るく振る舞うミズキだったが、「でも、会いてえよ……」と心の声が漏れる。ミズキはいつか弟を明るい未来に連れていってやりたいと願っていた。

♪約束の歌~meet you again~

弟を思う2人の兄。「いつかここを出たら4人で会おう」そうミズキとリュウガは約束した。



守るべき場所

ハシモトとナスは同じ孤児院育ち。6歳の頃、親に捨てられ孤児院に来たハシモトは、すぐナスと喧嘩になる。そして、園長に「兄弟喧嘩はしない」と叱られた。ハシモトはそれがものすごく嬉しかった。そこから2人はずっと兄弟のように育ってきた。


しかし、平和な生活も地上げ屋の存在によって崩れてしまう。"家族"と暮らす生まれ育った施設を守るため、ハシモトは地上げ屋へ火をつけようと施設を抜け出す。それについてきたのがナスだった。「俺が警察に捕まったらお前が施設を守ってくれよ」と言うハシモト。ナスがやめるよう説得するも、ハシモトはもう心を決めていた。兄弟のように過ごしてきた2人は、どんな時も一緒だった。大切な家族は自分たちの手で守りたい。だからナスはハシモトと一緒に建物に火をつけた。


建物の火はすぐに燃え広がっていく。「燃えろ燃えろ!何もかも燃やしてしまえ!」狂ったように炎を見つめていたが、すぐに警察がやってきた。笑いながら2人は夜の街へと駆け出した。


贖い(あがない)

更生プログラムNo.102。ここでは看守の監視のもと、ウキショとサクマの更生が行われていた。看守は罪を問い、反省を促してくる。自分の罪と向き合い、反省することこそ真人間へ更生する道なのだ。

ウキショは、オレオレ詐欺で捕まった。祖母に育てられたウキショは、祖母を楽させたいと給料が良い会社を選んだら詐欺グループだったという。おかしいと思いつつも、給料に目が眩み詐欺に加担するウキショ。「俺さ、ばあちゃんにうまいもん食べさせるために、他人のばあちゃんを騙してたんだよ…」。ウキショは早く少年刑務所を出たいと願っていた。


一方のサクマは反省する気が微塵もない様子だ。成績優秀で将来は医者か弁護士と育てられたサクマは、高校受験に失敗してしまう。期待に応えらなかったため、もう親からは見放されてしまった。そのまま不良グループへ入り、ピッキングが得意なことを生かして盗みを繰り返していたようだ。

自分の罪とどう向き合うかと看守に問われたサクマは、「勝手に期待して、勝手に失望して。こんなふうになってしまったのは全て親のせいだ、だから自分は何も悪くない」と主張する。ウキショは警察で土下座して謝る祖母を見て、早く祖母を安心させたいと言う。

それを聞いたサクマは、「これだから頭の悪いやつは嫌いなんだ。ここを出てもまともな職につくなんて不可能だ」とウキショに食ってかかる。ウキショは「誰にも愛されたことがないやつは、性根までねじ曲がってる」とサクマを蔑み、喧嘩が勃発した。

反省が見られない2人に、看守は無慈悲にも懲罰房行きを命じる。「おれを更生させたいなら、親をなんとかしろよ!」。サクマの叫ぶ声が虚しく塀の中に響いていた。



血塗られた怒り

♪Break out

荒々しいラップに思いを乗せてイガリとフジイは歌う。夢を否定されたあの日、マイクを持つはずイガリの手は血で濡れていた。その瞬間を忘れることはできないが、爆発する思いは誰にも止められない。奴らに何が分かるのか。過去は投げ捨て日々を燃やせ、世界を変えろと二人は歌い踊り狂う。


刑務所の日常

 
カナサシは今日も日記を書いていた。ここにいる人たちは人に言えない苦しみや悲しみを抱えてる。でもそれを知ったところで僕には何もできない。そんなことを綴っていると、そこへ仲睦まじげなナスとハシモトがやってきた。

少年刑務所に入ったら、赤青とチームが分かれてしまった2人は、殴り合いをしても本気で当たらないように殴る"フリ"の練習をしていたのだ。

カナサシに見られた2人は、誰にも言うなと口止めをする。いつもケンカをしている赤と青が仲良くしているところを見られてはいけないと彼らの事情を打ち明けた。


「それが二人の悲しみなんだね」と突然カナサシはいう。みんなの話を聞いてると、苦しみや悲しみが心に入ってくる。自分も苦しくなるけど、どうしていいか分からないとカナサシは悩んでいるようだ。

ナスとハシモトは、「その苦しみに最後まで向き合ってみれば」と提案する。中途半端に向き合うより、相手に何かしてほしいと言ってもらえるまで向き合ってみると良いと。

♪僕に聞くのかい?

「最後まで向き合う」ができるか不安なカナサシ。そこへ青チームのミズキとイガリがやってきた。練習としてこの2人と話してみることにした。

掃除当番を押し付ける2人に、カナサシは「はい」と道具を受け取る。「お前さ、嫌とかやりたくないとかないの?」とカナサシに言うが、本人はまた「別に嫌じゃないから」と返事をして押し付けられた掃除当番を受け入れている。

「そんなものアイツらにやらせればいいだろう」。そこへ赤チームが乗り込んできて、またケンカが始まった。

「僕が嫌なのは、赤とか青とかいがみ合っていることです!みんな仲良くしようよ!」と今までずっと小さな声だったカナサシが声を上げた。ついでに、ナスとハシモトが実は仲が良いことも言ってしまう。

焦るナスとハシモトだったが、2人が本気で殴り合っていないことを実はみんな知っていた。そもそも本当にケガするようなケンカはしていないし、軽いトレーニングみたいなものだ。ストレス解消には、やり合うくらいしかこの塀の中ではやることがないようだ。

なんだか和気藹々としてきた赤チームと青チームは、掃除バトルをしようと競うように出て行った。


カナサシは自分に問う。悲しみや苦しみを知ってもどうしようもできない。僕にできることは何だろう。みんなの笑ってる顔や声が好き、だからみんなを笑顔にしたいとカナサシは心に思った。



弟の危機

3日ぶりの入浴タイム。赤も青もみんなで一緒に風呂に入っていた。楽しい時間も束の間、入浴時間はすぐに終わってしまう。

入浴が終わって整列すると、看守たちは怒っている様子だった。ここは少年たちが仲良くなる場所ではない、真人間になるために更生する場所だからだ。少年たちは風呂上がりにもかかわらず、施設の掃除を命じられてしまった。


不満を漏らす少年たちを見ながら、看守はミズキへ弟の容態が急変したと連絡があったことを告げる。母親は外出許可を打診したが、規則ゆえ不可能だとその願いは取り下げられた。

それを知った少年たちは、看守へ怒りを向ける。声を荒らげる少年たちの中、ミズキは土下座をし弟に会わせてほしいと懇願した。

「そもそもあなたが罪を犯さなければ、ここにはいませんよね?過去の自分を反省しなさい」。看守は冷酷に掃除作業に移るよう命じるのだった。

この地獄みたいな牢獄に少年たちの希望はないのだろうか。


♪闇を突き抜けて
 


脱獄計画

ミズキの外出許可が下りない一件で、少年たちの心は荒んでいた。人間らしく生きたければまず人間になれという看守たち。心から望んでも願いが叶えられない環境に、ミズキは泣き叫ぶ。

それにつられて次々に少年たちが叫び出した、俺たちに生きる価値はないのか、俺たちの人生は呪われてるのか、何もかもうまくいかないならいっそのこと死んだほうがいい……叫び声の中「脱獄しよう」とカナサシが叫んだ。"脱獄"ということばに静まり返る少年たち。

「みんなには待っている人がいる、会いたい人がいるんだろう。こんなところにいてはいけない。本当の自由を手に入れるんだ」とカナサシは心の内を叫ぶ。

しかしここは鉄壁なセキュリティー。脱走なんて無理だと少年たちは言うが、ユウトは何かを考え込んでいる様子だ。

「いや、行けるかもしれない……」とユウトが言い出した。サクマとフジイが看守から電気室の鍵を盗む、そしてナスとハシモトがレバーをさげて、同時にミズキとリュウガが制御室でセンサーを解除する……スラスラと脱獄計画を語るユウトに、少年たちは脱獄へと思いを固め始めた。

「やるならみんなでやろう」。少年たちは脱獄することを決めた。決行は今夜の消灯と同時。少年たちの思いをかけた脱獄計画がスタートした。


気合い十分の少年たちは、みんなで協力して次々と計画をこなしていく。フジイとサクマは急病のフリをして看守から鍵を奪い、ハシモトは猫の格好をして看守の気を引いた。そしてナスとハシモトは同時にレバーを下げて非常用の電源に切り替える。

続いてはミズキとリュウガ。監視室に忍び入むと看守に見つかってしまうが、イガリとウキショが加勢して無事に監視カメラの電源を切った。サクマは得意のピッキングで鍵を開ける。全ての指揮を取るのはユウト。トランシーバーを使いみんなと連携をとっていた。

少年たちは作業所を抜け、広場に出て、塀の上へと逃げる。追ってくる看守と戦いながら逃げていく少年たち。ユウトとタイショウは看守と戦い、仲間を逃すための時間を稼ぐことにした。背中合わせで圧倒的な力を見せ、看守たちを倒していく2人。「ユウト、あの時お前が来なかったら俺は死んでた」とタイショウは言う。「これからもずっと一緒だ」とユウトは返し、力を合わせて最後の看守を倒した。


少年たちは脱獄に成功した。最後の門を抜けて外に出られたのだ。ようやく自由を手に入れたと思ったが、カナサシが塀の上から動かない。早く逃げなければ看守が来るのに、少年たちはカナサシに走って逃げろと叫ぶ。

カナサシは両腕を広げた。「僕がここで看守を引きつける」。カナサシは囮になるつもりなのだ。「これでいいんだ。僕には会いたい人も帰りたい場所があるわけでもない。みんなと出会えて、友達になれてよかった」。カナサシの思いは決まっていた。「走れ、走れ、走ってくれ」とあの声が小さなカナサシが叫ぶ。

置いていくのか、逃げるのか迷う少年たちだったが、「振り返るんじゃない、走ってくれ」と叫ぶカナサシを背に少年たちは走り出した。塀の上のカナサシは、看守たちに銃を向けられている。「みんな幸せになってくれ」とカナサシが呟いた言葉を最後に、銃声が鳴り響いた。


辿り着いた先で

少年たちは看守を巻き、廃工場のようなところに身を寄せていた。カナサシを置いて行ってよかったのか迷い、カナサシの様子を見に行こうとする少年、カナサシの思いを無駄にするのかという少年、いろんな思いが交差していた。銃はすごい音だった。きっともうカナサシは死んでしまっているであろう。


「俺が弟に会いたいなんて言わなければ、こんなことにならなかったんだ」とミズキは後悔するが、「弟に会いに行くんだよな?カナサシの思いを叶えて、弟に会うことが弔いになるんだよ」とユウトは言う。それでも自分の願いのために仲間が死んだことが、ミズキは自分を許せない様子だ。

それを見ていたタイショウが「お前だけの責任じゃない、これは全員の責任だ」と言った。ユウトは「自分を責めるな」と言う。少年たちはカナサシの分の思いも抱えて生きていくのだ。

♪あいつのぶんも生きる


君にこの歌を

夜が明けて、脱獄に成功した少年たちは、廃工場を出てそれぞれの向かうべき場所へと向かう。

少年たちは、自分の罪と向き合い未来を見つめていた。リュウガは怪我をさせた弟への償いを、サクマは親ではなく自分で将来を考えることを、ナスとハシモトは血が繋がっていなくても待ってる家族のためにちゃんと罪を償うことを決めた。イガリは父親とまた話したいと思っている、ウキショは祖母のために真面目に働くと誓い、フジイはカナサシを置いて行ったことがよかったかまだ迷っているがいつまでもお前のことを思うと空を見上げた。ミズキはやっと弟に会えたと感謝を伝えた。

そして、タイショウとユウト。こんどこそ仲間を信じて生きると誓う。少年たちはカナサシのところへ、少年刑務所へとまた戻るのだった。

♪きみにこのうたを

カナサシが座ろうとしていたあのブランコにカナサシの日記があった。みんなで読みながら、カナサシとの思い出を振り返る。

「さよならとお別れの挨拶を言う代わりに、君にこの歌を僕は送りたい」とカナサシの声が聞こえてくるようだ。

この世界では何が正解で、何が不正解か分からない。だから自分たちで答えを見極めるしかない。人を愛し、仲間を信じる。容易いことではないが、最後まで向き合うことでお互い通じ合うことができるだろう。

この少年刑務所で出会い、通じ合える仲間ができた。もうカナサシには会えないけれど、この思いを胸に少年たちは未来へと歩み始めた。


SHOW TIME

アクセントダンス/少年忍者

メンバーカラーのスポットライトの中、一人一人のアクセントダンス。衣装は白っぽいジャケット。

Make you wonder/HiHiJets

メンバーカラー新衣装で登場。ローラースケートありで、サマパラ2021で新しくなったほうの振り付け。

Super boys/美少年

真っ赤な新衣装で登場。ジャニアイとは振り付けが全く違い扇子なしのダンス曲に。


Crash beat/HiHi Jets・美 少年

真っ黒な衣装に、真っ黒なドラム缶風太鼓。薄暗いステージで、落ちてくる水、カラフルなライト、蛍光反射のサングラスと光と音と水が重なり合う新たなパフォーマンス。

髙橋優斗・岩﨑大昇挨拶/少年忍者コンテンポラリーダンス

優斗と大昇の挨拶がアナウンスで流れる中、白い衣装の少年忍者によるコンテンポラリーダンス

We'll be together/HiHi Jets・美 少年・少年忍者

王子様風新衣装をHiBそれぞれ着用。途中から少年忍者も加わり回転するステージの中で歌唱。



今年の感想

ついにやってきたHi美の少年たち。日生と帝劇梯子してチョロっと出演してたあの頃から、ずいぶんと成長しました。

今年は何より、内容がコンパクトで初見でも内容が分かりやすいのが印象的でした。そして少年たちの罪と性格が令和!!そもそもで争いを好き好んでる子があまりいなくて、なんで争うんだろうな?って言い出すほど。乱闘も最小限でした。

例年だと、南の島で入水自殺が〜、母国に強制送還で戦死した〜とか、話が色々盛り込まれて理解が追いつかない部分もあったのですが、今回は「少年たちがなぜ罪を犯したか、彼らはどんな選択をして、これからどう生きるのか?」を主軸に話がまとめられていました。


令和らしいなと感じたのは、対照的だった浮所と作間。祖母に愛されて育った自覚がある浮所と親に愛されてる自覚がない作間、おそらく貧乏で十分な教育が受けられなかった浮所と、裕福で十分な教育を受けられる環境で育った作間。

二人とも被虐待児でなかったものの、「これだからバカは」「中卒でいい給料なんてもらえるわけがない」と作間に言われるほど、世の中的に正しい判断ができる教養や知識がないまま世間に出ている浮所。

一方の作間は、しっかりと勉強ができる環境で育ったものの親ガチャ失敗で、愛されずに満たされない気持ちを犯罪に向けてしまった人。

真逆の二人がたどり着いた場所が少年刑務所なのが皮肉な運命なようで、罪を起こしてしまう原因が生育環境だとも伺える様子は今までの少年たちとはまた違った令和の少年たちだなと思いました。

これまでも、片親とかDVとかあったけれど、どちらかと言うと本人の怒りが強く、生育環境を伺わせるシーンを丁寧に描かれていた印象をがそこまでないので、興味深かったです。

みんな優しいけれど、社会の歪みから犯罪に手を染めてしまった感じの設定がちょっとリアルで、生々しさがまた沁みる。脱獄に成功したけれど、結局少年院に戻ってくる選択をしたのも、少年たちが自分たちなりの答えを見つけた着地のようで、脱獄前と後で同じ少年院で過ごす日々も違うんだろうなと想像してみたりしました。今回は十数年後の未来を見せないエンド(例年は大人になって〜ってラストが多い気がする)で、今を生きるエンドなのもまた意味があるようでHiHi Jetsと美 少年の少年たちだなと思いました。




そして自担の話になりますが、瑞稀くんは個人的念願だった「約束の歌」のシーンがあったので、思い返すたびに胸が熱くなって泣きそうになります。演技も歌も上手いんよ。本当に。

瑞稀くんは悲劇の役を与えられがちなのですが、例に漏れず今回も物語を動かすきっかけを作り出しました。弟の病状の悪化、少年刑務所から出れないなら、脱獄して会いに行こうとなり、仲間が死亡。

そもそも捕まったのが弟の入院費のために金を奪ったことが原因なのですが、家では親と弟に迷惑をかけ、刑務所では自分のせいで仲間が死にと、二重の苦しみの中にいるミズキ。悲痛な声も泣きそうな顔も怒りに震える様子も、本当に引き込まれる演技で、こりゃこの子に悲劇を与えたくなっちゃうな〜と思いながら見てました。最後の最後まで、ずっと一人悔やんで苦しんでた。ミズキには悲劇が似合うけど、いつかめちゃくちゃに幸せになってほしい。



HiHi Jetsと美 少年はもうすぐ、少年とも呼ばれなくなるくらい大人に近づいています。大人と子どもの本当に狭間、まだ危うさが残る少年たちが、迷いや葛藤、何かを探して生きる様を描いたこの舞台を、今のこのタイミングでできたことは良かったと思います。たぶん今しか演じられないものがあると思う。1ヶ月の間にも演技や雰囲気が変わるこの舞台が、1年経てばまた印象が違うものになることでしょう。今、彼らの一瞬を目撃できたことを嬉しく思います。